税理士によるコラム
私が相続に関する相談をお受けする中でよくある事例です。
「父が亡くなりましたが、不動産は祖父名義のままです」とのこと。相続税の申告に際しても若干問題があ
るところですが、利用実体があるだけGood!と言えるでしょう。
国土交通省の資料によると所有者の所在が不明の土地は、国土面積の20.1%に及ぶと言われています。こ
のうち70%弱が、相続時の未登記が理由だそうです。
相続登記をしないままで相続人が亡くなると代襲相続が発生し、相続人が増え権利関係は複雑化します。
又、所有者が不明の不動産はいつの日か廃屋や放棄田畑となり、勝手には処分できないことから、行政に
よる都市開発や近隣住民への迷惑となるなど、社会問題化しているのが現状です。
これらの事態を解消し、不動産の所有者を明確(相続登記の義務化)にするため、不動産登記法が改正
されました。
その内容は、
1.相続登記の義務化(実施日:2024年4月1日)
相続開始を知った日から3年以内に登記を行うこと。
また、所有者が住所を変更した場合は、2年以内に登記を行うようになりました。
2.相続登記義務違反の罰則
正当な理由なしに3年以内に登記しなかった場合、10万円以下の過料、又、住所変更登記に違反
した場合は、5万円以下の過料が課されることになりました。
3.改正前の未登記分
改正法の施行日(2024年4月1日)から3年以内に相続登記を行うこととされ、又、住所等の変更
も2年以内に行わなければなりません。
4.遺産分割協議が進まず期限内に登記できない場合の救済措置
「相続人申告登記」の制度があるが次の事実が
①該当の登記名義人に相続が発生したこと
②相続人が判明している
あることを登記すれば罰則を免れることができます。この措置はあくまで「登記簿上の所有者」
が死亡した事実を表示する登記手続きで不動産を相続する人が決まった場合は遺産分割の日か
ら3年以内に名義変更登記を行う必要があります。
5.相続土地国庫帰属制度(新法)
「土地を相続したが使う予定もないので登記もせず放置した」こんなケースも不明土地の遠因
の一つかもしれません。これらの救済する措置として、このような不要な土地を国に返納する
ことができる制度も創設されましたが、無条件で土地の相続の放棄が認められる訳ではなく、
土地に建物が建っている場合や使用されている土地に権利争いのあるもの、その他等、申請が認
められないものもあります。(2023年4月27日から開始)
以上、不明土地等に絡み制度化された内容ですがこの制度の趣旨を理解され、早目の登記を心がけたい
ものですね。