税理士によるコラム
新型コロナウイルスの影響により、売上減少・資金繰り悪化が続いている現在。
中間申告分の法人税をまともに払うことは厳しい状況かと思います。
そこで国も、新型コロナウイルスの影響により国税を一時に納付することが困難であり、一定の要件を満たす場合には税務署に申請することにより延滞税なしで納税を猶予する制度を打ち出しましたが
敢えて今回は、猶予ではなく既存の制度を使い中間申告分の法人税そのものを減らす方法をご紹介しようと思います。
目次
1.中間申告とは
2.中間申告の計算方法
3.まとめ
【中間申告とは】
内国法人である普通法人(清算中のもの、他一定のものを除く。)で事業年度が6か月を超える場合には、基本的に事業年度開始の日以後6か月を経過した日から2か月以内に納税地の所轄税務署長に中間申告書を提出し、法人税を国に納付しなければなりません。
例えば、12月決算法人の場合には、8月末までに中間申告書を提出し、法人税を納付しなければなりません。
簡単に言うと事業年度が1年の法人の場合は、1年分の法人税を一括で払うのではなく、半年経過した段階で、一旦法人税の前払いをして下さいということです!!
法人は、事業年度の期間を1年以内であれば任意に設定できるため、事業年度が短い法人と事業年度が1年の法人とを比べると、事業年度が短い法人は納期限が早く到来するため、納税額の負担感が異なることとなり、また、国の財政収入の平均的な確保がされにくくなります。
それを是正する観点から設けられたのが中間申告制度です。
【中間申告の計算方法】
中間申告の計算方法は、以下の2つあります。
原則は下記1の前年度実績による計算方法となります。
1.前年度実績による中間申告(予定申告といいます。)(法71)
前事業年度の確定法人税額 / 前事業年度の月数 ×6 となります。
税務署から税額が記載された納付書が勝手に郵送されてきますので、それを支払えば終了です。
事業年度が1年の法人の場合、前事業年度の確定法人税額が120万円とすると
120万円 / 12 × 6 = 60万円 となります。
計算が非常に簡単かつ、仮に中間申告書の提出をしなかったとしても、前年度実績による中間申告書の提出が
あったものとみなしてくれるため手間がかからず実務的によく使われる方法です。
※税務署側・法人側の手間を省くため上記の算式により計算した金額が10万円以下の場合は、中間申告書の提出、納税ともに不要です。
2.仮決算による中間申告(法72)
事業年度が1年の法人の場合、事業年度開始の日以後6か月の期間(上半期)を一事業年度とみなして中間申告分の法人税を計算することができます。
たとえば12月決算法人の場合ですと当年度の1月から6月の実績により法人税を計算します。
去年は黒字、今年の上半期は赤字または確実に赤字が見込まれる場合等は、この仮決算による中間申告を選択することにより納税額を少なくすることができます。
例えば、新型コロナウイルスによる影響を比較的受けている1月から5月の期間が上半期に該当する12月決算法人は、昨年が黒字の場合仮決算による中間申告を選択する方が有利に働く可能性が非常に高いです!!
ただし、業績悪化等があった場合に中間税額が過大とならないようにというのが仮決算による中間申告の立法趣旨であるため
下記の場合等には、仮決算による中間申告書を選択できません。
1)2により計算した税額 > 1により計算した税額 の場合。
2)1により計算した税額が10万円以下の場合。
デメリットとしては、仮決算による中間申告は、決算時と同じ作業になりますのでかなり手間がかかります。
中間申告の計算期間の末日の貸借対照表、損益計算書、株主資本等計算書、勘定科目内訳書 の提出も義務付けられていますので
事務負担が通常の決算とほとんど変わりません。
【まとめ】
「資金繰りの負担」と「事務手続きの煩雑さ」両者を天秤にかけ、それでもなお仮決算をした方がメリットがある!!という場合のみ仮決算による中間申告を選択すると良いと思います。
WING税理士法人 小西章太