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税理士によるコラム

生活に身近な『税額控除』
2020.02.14 スタッフ

生活に身近な『税額控除

~ ほんとうに『税額控除』で節税になるの? ~ 


【ポイント】

『税額控除』は、

☆ 自分で、確定申告をすることによって
☆ 税額から直接差し引くことができる控除のこと
☆ 一般的には、『所得控除』より『税額控除』の方が
  “節税効果は高い”ことが多いです。


【目 次】

1.『所得控除』と『税額控除』の違い
2.『税額控除』の種類と意味
3. まとめ

の順番におもな『税額控除』のポイントをご紹介します。


1.『所得控除』と『税額控除』の違い

①『所得控除』とは、
税額を計算する前の所得から控除をします。
例えば、
扶養控除・医療費控除など14種類の『所得控除』があります。
※『所得控除』とは ・・・ 前回のコラムに掲載しています。

②『税額控除』とは、
計算後の税額から直接差し引きます。
例えば、
配当控除や住宅ローン控除など20種類の『税額控除』があります。


『税額控除』は、
“自分で申告”しなければ、適用されることはありません。
『税額控除』は、
多くの種類があり、「期間限定」の『税額控除』もあり、
受けられる条件も異なります。
納税者自身が、
「どんな書類を準備していいの?」と、悩むところですね。

“せっかくある『税額控除』”の適用を受けずに、
“結果的に税金を多く納める”ことになったとしても、
納税者自身が“お尋ねのお電話”などしない限り、
税務署からは親切に教えてくれるわけではありません。
できれば普段から税理士に相談すると、
あわてずにすむのではないでしょうか・・・。


【チェック】
☆ 納税者自身が適用できる『税額控除』があるか確認し、
☆ 必要な手続きを行うようにしましょう。


2.『税額控除』の種類と意味

『税額控除』の種類は、
 
①配当控除
②外国税額控除
③政党等寄附金特別控除
④認定NPO法人等寄附金特別控除
⑤公益社団法人等寄附金特別控除
⑥住宅借入金等特別控除
⑦住宅耐震改修特別税額控除
⑧住宅特定改修特別税額控除
⑨認定住宅新築等特別税額控除
⑩試験研究を行った場合の所得税額等の特別控除
 
…など、全部で20種類もの『税額控除』があります。
 
例えば、
・住宅ローンの負担低減のためだったり、
・外国で収入が発生した場合に、
 外国と日本で2重で税金を払うのを避けるためなど、
『税額控除』の種類は様々あり、『税額控除』が多ければ、
 その分だけ税金が安くなります。


ここでは、生活に身近な『税額控除』をご紹介します。


(1)配当金を受け取ったとき ・・・ 「配当控除」

基本的に、配当金を受け取る際は、
約20%の源泉徴収が行われるため、
確定申告をする必要はないのですが、
あえて確定申告を行うことで受けられるのが、
この「配当控除」です。
ただし、確定申告の際は、
“総合課税”または“申告分離課税”のいずれかを
選択する必要があります。
“総合課税”を選択した場合は、「配当控除」が受けられ、
“申告分離課税”を選択した場合は、「配当控除」は受けられませんが、
株や投資信託の損失と“損益通算”が出来ます。

《注意》
両方を選択することはできないため、
自身の状況に合わせて適切な課税方法を選んでください。


(2)特定の法人などに寄附をしたとき ・・・ 「寄附金特別控除」

まず、寄附金控除の対象になる方は、
具体的には以下に寄附をした方々です。

・国
・都道府県、市区町村
・政党、政治資金団体・・★
・住所地にある日本赤十字社の支部
・公益財団法人、公益社団法人、学校法人など・・★
・認定NPO法人・・★
・震災関連の寄付金


★ 印
 「寄附金控除」(所得控除)ではなく、
 「寄附金特別控除」(税額控除)を適用することもできます。
 ただし、
 どちらか一方しか選択できないので、ご注意ください。


「寄附金特別控除」には、次の3種類があります。

1)政党等に寄附をしたとき
       ・・・「政党等寄附金特別控除制度」

個人が政党または政治資金団体に、政治活動のための一定の寄附金を
寄附した場合に受けられる控除です。


2)NPO活動のために寄附をしたとき
       ・・・「認定NPO法人等寄附金特別控除」

認定されているNPO法人等のNPO活動のために一定の寄付金を
支払った場合に受けられます。


3)公益法人等に寄附金をしたとき
       ・・・「公益社団法人等寄附金特別控除」

下記の公益法人等に、一定の条件をクリアして寄附金を
支払った場合に受けられます。

・公益社団法人および公益財団法人
・私立学校法に規定する学校法人、専修学校、各種学校
・社会福祉法人
・更生保護法人
・国立大学法人、公立大学法人、
 独立行政法人のうち国立高等専門学校機構と日本学生機構


《注意》
「寄附金特別控除」(税額控除)は、
申告内容にもよりますが、寄附金控除(所得控除)よりも
節税効果が高い場合もあります。

例えば、所得税率が10%の方が、1年間に12,000円の寄付をした場合

【所得控除】を選んだ場合

  (寄附金1万円-2,000円)× 10%(※1) = 800円  の節税効果

   (※1)所得税の課税所得によって、5~45%の税率になります。

【税額控除】を選んだ場合

  (寄附金1万円-2,000円)×40%(※2)= 3,200円 の節税効果

   (※2)政治など寄附先によって30~40%の率になります。

ただ、税率が高い高額所得者には、
減税額が大きい【所得控除】がおすすめです。


(3)住宅控除

◇ “ 住宅ローン ” がある場合  ◇

1)住宅購入、改築などで借入をした場合
       ・・・「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除」

居住者が、国内において金融機関等(銀行など)を利用して
“住宅ローン”を組むなどして、住宅の取得や増改築などを行い、
その取得年中に、当該住宅を住居として利用した場合に受けられるものです。

給与のみの方は、
1年目に確定申告を行うことで、
2年目からは勤務先で行う年末調整の際に控除を受けられます。

① 住居の新築、売買贈与等で取得、あるいは増改築等( 図❷ )

自ら居住用の住居の新築、
あるいは新築中古住宅を取得、
既存住宅の増改築などを行い、
その取得等の際に組んだ住宅ローン等がある場合に、
受けられるものです。

② 特定の増改築等( 図➌ )

バリアフリー(自ら所有の建物に段差をなくすなど)工事や
省エネのための増改築改修工事などを行い、
自ら住居として利用した場合に受けられます。

《注意》
①と②のどちらにも該当する場合、選択となります。
借入金の金額、期間を考慮して選択してください。
※ ①の場合 ・・・ 所得税で控除しきれない分は、住民税からも控除ができます。


◇ “ 住宅ローン ” の有無を問わない場合  ◇

2)マイホームの耐震リフォームをしたとき
       ・・・「住宅耐震改修特別控除」( 図❺ )

昭和56年5月31日以前に建てられて、
現在も住居として利用している家屋に、
耐震改修をした場合に受けられます。
その年の所得税から一定額を控除できる特例制度です。


3)自宅のバリアフリー改修工事や省エネ化
       ・・・「住宅特定改修特別税額控除」( 図❻ )

耐震工事といったお部屋の増改築をしたり、
段差をなくすためや、
省エネのための増改築改修工事で、
定められた条件を満たす場合に受けられます。

《注意》
「住宅借入金等特別控除」の適用を受けるとき、
両方を重ねて申告はできません。


4)認定長期優良住宅の新築や低炭素建築物である家屋の新築
       ・・・「認定住宅新築等特別税額控除」( 図➍ )

・認定長期優良住宅の新築
・建築後未入居未使用の認定長期優良住宅の取得
・建築後未入居未使用の低炭素建築物の取得
があった場合に受けられます。

《注意》
「住宅借入金等特別控除」との選択適用になります。


(4)自然災害や盗難、横領の被害に遭ったとき・・・「災害減免法」

詐欺や恐喝の場合は対象外ですが、
突然の自然災害(台風や地震など)や人為災害(火災など)
または盗難・横領によって、資産について損害を受けた場合には、
つぎの控除のうち、

・災害減免法(税額控除)
・雑損控除(所得控除)

どちらか有利な方を選ぶことができます。

『税額控除』である「災害減免法」の適用を受けるには、
① 災害にあった年の所得金額の合計が1,000万円以下で、かつ
② 災害によって受けた住宅や家財の損害金額
 (保険金等で補てんされる金額は除きます)が
 その時価の2分の1以上である場合には、
『税額控除』である「災害減免法」の適用を選択できます。

《注意》
「雑損控除」と「災害減免法」は、
どちらかを選択する必要があります。
損害額が大きい場合は、
「雑損控除」の方が得することが多いようです。
なぜなら、
①「災害減免法」は“1年限り”の税額控除ですが、
②「雑損控除」は損害額が大きくて、
その年の所得金額から控除しきれない場合には、
“翌年以後(3年間が限度)に繰り越して”、
各年の所得金額から控除することができるからです。


(5)その他の税額控除

上記以外にも多数の税額控除が存在します。
もし気になった控除制度がありましたら、
内容をチェックしてみてはいかがでしょうか。


3.まとめ

これまでご紹介してきたように、

『税額控除』は、“税額から直接差し引く”ことができる制度です。

生活に身近な「住宅借入金等特別控除」や「配当控除」など
適用できる人も多いと思います。

該当するものがあるときは、積極的に適用されてみてはいかがでしょうか。

また、『税額控除』を受けるには、
必ず“一定の書類の提出”が必要となります。

適用したい場合には、
①“添付書類の準備”を忘れないようにしましょう。控除の種類によって、
② “各種証明書・登記簿謄本”など必要な書類は異なります。

事前に、確認をしておきましょう。


詳しくは、
国税庁のHPなどで、それぞれの控除について
確認をされてみてはいかがでしょうか。

参照:国税庁ウェブサイト

1200税額控除
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1200.htm

参照:内閣府NPOホームページ/NPO法人ポータルサイト

所轄庁認定・特例認定NPO法人名簿
https://www.npo-homepage.go.jp/npoportal/certification


次回のコラムは、『 贈与税 と 消費税 』をご紹介いたします。

                                  

                           執筆者 石橋 靖子

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